腹部大動脈瘤・胸部大動脈瘤

動脈瘤とは…動脈が脆弱化した部分、つまり血流から受ける力を保持できなくなった部分が結果として形成する風船様の拡張です。体のどの部分の動脈にも形成する可能性がありますが、特に腹部大動脈と腸骨動脈に比較的多く発生します。一般的に大動脈径は19~24㎜ですが、瘤化により通常の数倍に拡大する事があります。
大動脈は大きく分けて横隔膜より頭側の胸部大動脈と、横隔膜より足側の腹部大動脈に分類されます。

腹部大動脈瘤

症状は多くの場合、自覚症状がありません。最近の検査技術の発達により、定期健診による腹部の触診や検査(腹部超音波検査、腹部CT検査など)により偶発的に発見されるケースが増加しております。

腹部大動脈瘤

症状は多くの場合、自覚症状がありません。最近の検査技術の発達により、定期健診による腹部の触診や検査(腹部超音波検査、腹部CT検査など)により偶発的に発見されるケースが増加しております。

一旦動脈瘤が破裂すると腹部、背中、腰の部分が中等度から高度な疼痛を訴える場合が多く、命の危険性が非常に高くなり緊急手術が受けたとしても死亡率は50%と言われています。予防的に手術をする事が非常に重要であり、ある程度の大きさまで瘤が大きくなると破裂の危険性が高くなり、手術を勧めております。
治療方法としては2つの選択肢があり、開腹外科手術、血管内治療です。

開腹外科手術

血管内治療(ステントグラフト内挿術)

  • 比較的新しい治療方法ですが、近年は急激に症例が増加している術式でもあります。腹部大動脈ステントグラフト内挿術といい、血管内側にステントグラフトを経カテーテルで留置し、圧が動脈瘤にかからないようにして破裂を防ぐ方法です。
  • 血管内治療は全身麻酔下、または局所麻酔下で行われ手術時間は1~2時間程度
  • 大腿部を2㎝程度の切開で出来ます
  • 入院日数も3~5日程度と開腹外科手術に比べて患者様の負担が少ない手術方法です

※この術式の場合は解剖学的(血管大きさや走行)によっては施行できない場合もありますので、担当医師に問い合わせして下さい。

胸部大動脈瘤

一般的に胸部大動脈瘤の正常径は30mmであり、50mmを超えると背景疾患によっては手術適応となります。また、瘤の形状が嚢状瘤や仮性瘤の場合は径が小さくても手術を必要とする場合があります。破裂すると救命が極めて困難になる為に、予防的に手術を要する疾患となります。
症状がない場合が多いですが以下の症状で発見されるケースがあります。

  • 胸、背中の痛み
  • 声がかすれる
  • 息が苦しくなる、血痰がでる
  • 食物が飲み込みにくい
  • 大きな声が出しにくい

これらの症状を認める場合は瘤が拡大している可能性があり、検査が必要です。

胸部大動脈瘤の大きさや位置、患者さんの全身的な健康状態により、動脈瘤をどのように治療していくかが決定されます。
発見された時点で動脈瘤が小さい場合には、医師は動脈瘤を観察するための定期的な検診を行います。しかし、既に直径50mm前後以上の大きな動脈瘤や、急速に拡大していることがわかった場合、形が悪い場合など、破裂のリスクが高い動脈瘤は、治療が必要となります。治療法には、開胸手術治療または血管内治療の2つあります。一般的に薬により動脈瘤が消退する事はありません。

人工血管置換術(開胸手術)

  • 人工血管置換術は胸部大動脈瘤の伝統的な選択肢です。
  • 動脈瘤を人工血管で置換し、糸で縫合することによって大動脈を修復する術式です
  • 人工心肺を使用する必要あり、侵襲が比較的大きい手術方法となります。
  • 動脈瘤の位置、性状によって、手術方法・時間は異なります
  • 平均入院期間は7~14日程度

血管内治療(カテーテル治療)

  • ステントグラフト内挿術は胸部大動脈瘤の治療としては比較的新しい術式です。
  • 開胸手術と異なり、胸部を大きく切開することなく治療することができるので、患者さんへの負担が少なく、ご高齢の方や他に病気のある方でも安全に行うことができます。
  • 大腿部の付け根から動脈にカテーテルを挿入し、動脈瘤の内側にステントグラフトを配置し、新しい血流路を確保することにより動脈瘤を血流から遮断するものです。
  • 手術時間は1~2時間程度
  • 平均入院期間は3~5日程度

※この術式の場合は解剖学的(血管大きさや走行)によっては施行できない場合もありますので、担当医師に問い合わせして下さい。

※腹部大動脈瘤・胸部大動脈瘤ともに破裂する前に、予防的に手術する事が大切です。
指摘された場合は、速やかに心臓血管外科に受診し、精査加療を受けて下さい。

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