週末からの連休は急性大動脈解離Stanford A型が2件、腹部大動脈瘤破裂が1件立て続けに救急搬送されました。
腹部大動脈瘤破裂は動脈瘤がやぶれた状態、つまり大動脈から血液が噴き出るわけですので、出血性ショック(後腹膜腔に大量出血)を伴っていることが多く、病院にたどり着けないことも多い病気です。診断がつきしだい救急外来かハイブリッド手術室で大動脈バルーンを破裂した動脈瘤の中枢で膨らませ、血液を流れないようにせき止めた後(これで動脈瘤の破裂部位からの出血を軽減させる)、急速輸血で一旦血圧上昇をはかり、引き続き開腹人工血管置換術にするかステントグラフト内挿術にするかを判断します。今回はステントグラフト内挿術で無事終了しました。
破裂での緊急手術死亡率は20%前後で施設によっては30~50%に達するところもあり予後不良です。破裂する前に治療できれば危険率1%前後ですので全く状況が違うということです。大動脈瘤は血管が風船のように膨らんだ状態をいい、正常径の2倍以上になると破裂の危険性が高くなります。
大動脈瘤は痛くもかゆくもなく基本的には症状がないのでなかなか診断に至ることが少ないのですが、他の病気でCT検査や腹部超音波エコーなどで偶然発見されることがあり、このような方は運がいいと言えるでしょう。
原因は動脈硬化ですので、①高血圧症 ②高脂血症 ③糖尿病 ④喫煙歴あり のうち一つでも当てはまる方は、一度CTの検査をされてもよいと思われます。CTは造影をしなくても大動脈瘤の存在はわかりますので検査自体はすぐに終わり、その日に結果もお伝えすることができます。
急性大動脈解離の症例ですが、今回も1例は解離腔による腕頭動脈狭窄が原因の脳虚血症状がある症例でありました。直ちに緊急手術を施行して、幸い麻痺などの後遺症もなく数時間後には抜管することができ、順調にリハビリを行っています。
動画は大動脈解離を起こした血管です。一部まだ解離していない部分がありますが、内膜から外膜を引っ張ればいとも簡単に解離していきます。解離とは内膜に亀裂が入り、そこから血液が流入しこのように内膜と外膜の間をその圧力で裂いていくわけです。
Dr.K
感染性心内膜炎 »