2月16日・17日と京都で開催された第45回 日本心臓血管外科学会総会に参加してきました。最近のtopicsや各施設の成績や研究への取組み、講演などを聞き多くの刺激を受けました。またノーベル生理学・医学賞を受賞された山中 伸弥教授の『iPS細胞研究の現状と医療応用に向けた取り組み』と題した特別講演もあり非常に勉強になりました。
夕方、学会から病院へ戻るや否や、スタンフォードA型 急性大動脈解離の緊急患者さんの御紹介があり手術室に搬入し麻酔導入したところで、もう一件今度は先日お話した心タンポナーデで血圧50mmHgのショック状態の同じA型 急性大動脈解離の患者さんがERに来院されました。こちらの症例の方が状態が悪く、すぐにでも開胸した方がいい状態…幸い先に手術室へ搬入した患者さんに対する人工心肺、手術器械の準備はすでに完了していたので、隣の手術室にショック状態の患者さんをただちに搬入し人工心肺、手術機器を移動し超緊急で手術を開始すると同時にもう一台人工心肺と手術機器を至急準備し並列で上行置換術と弓部置換術の手術を行いました。それぞれ4時間前後で無事に手術終了したところへ、さらにもう1例の解離の患者さんがERに運び込まれ、引き続き朝までの緊急手術となりました。
この時期は我々も臨戦態勢で臨みます。麻酔の先生方、手術室・ICUスタッフ、MEの皆さんの迅速な対応のおかげで皆さん救命することができました。
やはり急な冷え込みはいけませんね。特に高血圧症のある方は、お出かけ時にはしっかり防寒してお出かけ下さい。
Dr.K
1月下旬から2月にかけて緊急が増えてきました。やはり緊急手術が必要となるのは急性大動脈疾患である急性大動脈解離や大動脈瘤破裂の症例です。
当グループでの昨年度の急性大動脈解離(Stanford A型)の手術症例はちょうど50例でありました。
先日の緊急症例は、ER救急外来到着時には血圧70mmHg台のショック状態で、所見より直ちにCT施行し急性大動脈解離スタンフォードA型、心タンポナーデによるショック状態と診断され、当科に紹介となりました。
心タンポナーデとは。。。
心嚢という袋の中に心臓があるのですが、限られたスペースのため解離した血管より血液が浸みだしたりあるいは破裂により心臓の周りに血液が貯留することで心臓が身動きできなくなり、つまり拍動できなくなることで血液が送り出せなくなります。血圧は低下し、やがて心停止に至ります。同じ急性大動脈解離でも一刻も争う状態ですので直ちに各部署に連絡し、緊急手術の準備に入ります。
たとえ夜中であろうとも、手術室スタッフ、MEさんは本当に優秀で病気のことを理解してくれているので、『解離のショックだから至急準備お願い!』の一声で24時間いつでも準備してくれます。20~30分もあれば準備できますので、ある程度のめどがついたら手術室へ搬入し、麻酔導入と同時進行で準備します。
われわれは手洗いを済ませ、傍らでいつでも開胸できるように待機します。今回も手術室に搬入時には血圧はさらに50mmHgと低下。至急麻酔導入し、ライン類を挿入した時点で血圧が触知不能となり、脈も伸びてきたため直ちに消毒し、開胸、心嚢を切開したところ血液が噴出しタンポナーデが解除されると同時に、血圧が戻り心停止を免れました。
大概このような状態に陥る場合、大動脈は破裂(外膜の破綻)していることが多く、引き続き人工心肺の確立に入ります。この症例も上行大動脈中腹の肺動脈側に破裂(CTの→部分)しており用手的に圧迫しつつ人工心肺を開始し、その破裂部位の遠位側で幸い大動脈遮断ができました。
手術室の中であればこのような壮絶な展開は可能なのですが、救急搬送中や救急外来での待機中にこの状態となれば手立てはなく、天を仰ぐしかありません。ですのでいかに迅速に診断し、手術室に搬入するかが生死を分けると言っても過言ではない疾患であります。ここまで急を要する症例はたまにしかありませんが、急性大動脈解離のどの症例でもなりうるのです。
麻酔の先生も24時間いつでも飛んで来てくれます。本当に良い環境で仕事をさせて頂いているとつくづく感じますし、実際全員がそういう意識でないと特に緊急大動脈疾患の患者さんは救命できないのです。
当センターは24時間365日、一度も断らずやってきました。3人のスタッフでたとえ症例が重なろうとも常時対応しております。
手術ができる病院を探すだけで、無駄な時間を費やすのは賢明ではありませんが、そこで15分、30分と費やしてしますのが実情のようです。
急性大動脈疾患に対する迅速な対応は、当センターの使命の1つでもあります。”あと数分早かったら・・・” という思いだけは避けたい、そのための施設と思ってすぐに御連絡頂ければと存じます。
Dr.K